20代・30代でキャリアに迷っているあなたへ。「日本のロケットって最近どうなの?」と聞かれて答えられますか。新型ロケットH3は初号機の失敗から立ち直り、5機連続成功。打ち上げビジネスは国から民間企業・三菱重工へ移りつつあり、「宇宙で働く」が現実の選択肢になり始めています。
結論:H3は「失敗から立ち直った」日本の新しい基幹ロケット
H3はJAXA(宇宙航空研究開発機構)と三菱重工が共同開発した大型ロケットです。2023年3月の初号機は、指令破壊という形で失敗に終わりました。
そこから2024年2月の2号機で打ち上げ成功。以降成功を積み重ね、2025年10月の7号機成功で5機連続成功、成功率は83%まで回復しました(日本経済新聞)。
- 2023年3月:初号機、失敗
- 2024年2月:2号機、成功——ここから連続成功が始まる
- 2025年10月:7号機成功で5機連続
なぜ失敗の話を最初にするのか?
2025年12月22日の8号機は、測位衛星「みちびき」5号機を載せたまま第2段エンジンが早く止まり、打ち上げに失敗しています。順風満帆な話ではありません。
でも宇宙開発は「失敗の原因を特定して、対策して、また飛ばす」仕事です。実際、2026年には補助ロケットを使わない新形態「30形態」の打ち上げにも挑んでいます。失敗で止まらないのがこの業界の本質です。
H3は何を目指しているロケットなのか?
一言でいうと「商業的に勝てるロケット」です。従来機H-IIAより打ち上げ費用を大幅に下げ、世界の衛星打ち上げ受注を取りにいくために開発されました。
打ち上げ業務はJAXAから三菱重工へ段階的に移行が進んでいて、「国の事業」から「民間のビジネス」へ性格が変わりつつあります(日本経済新聞)。つまり、宇宙が雇用を生む産業になってきたということです。
H3はどこで作られているの?
H3の機体は三菱重工の飛島工場(愛知県)で組み立てられ、船で鹿児島県の種子島へ運ばれます。エンジン、タンク、電子機器、配管——ロケットは巨大な「製造業の集合体」です。
1機のロケットの裏には、全国の部品メーカー・試験設備・協力会社が連なっています。宇宙産業の求人は「ロケット設計者」だけではありません。
年収はどれくらい?三菱重工の給与水準
三菱重工業の平均年間給与は約1,017万円(2025年3月期有価証券報告書、平均年齢42.5歳)。重工業界でもトップクラスの水準です。
もちろんこれは本体従業員の平均値で、20代がいきなりこの金額になるわけではありません。ただ「製造業=給料が安い」というイメージがデータと合っていないことは知っておいて損がないです。
未経験から宇宙産業に入るルートはある?
「宇宙=エリート研究者だけの世界」は誤解です。ロケットの現場には溶接、配管、電装、品質検査、設備保全——いわゆる工場の仕事が大量にあります。
現実的なルートは2段階。まず製造業の現場(機械加工・検査・保全など)で2〜3年の経験を積む。その経験を持って、宇宙関連の部品メーカーや重工系の協力会社へ移る。20代ならこの動き方が十分間に合います。
将来性は?打ち上げ需要はどうなる?
通信衛星・観測衛星の打ち上げ需要は世界的に増え続けています。日本国内ではH3がその受け皿で、打ち上げ回数を増やす体制づくりが進行中です。
「国産ロケットが商業受注を取って定期的に飛ぶ」状態を支える人材は、設計者から現場技能者まで全レイヤーで必要になります。20代でこの産業に入ることは、30年使えるキャリアの土台になり得ます。
失敗から立ち直って5機連続成功。この回復力こそ、日本のものづくりの現在地。
H-IIAからH3へ——30年ぶりの世代交代で何が変わった?
H3の前任機H-IIAは、長年にわたり日本の衛星打ち上げを支えてきた信頼性の高いロケットでした。ただし設計が古く、打ち上げ費用の高さが商業受注のネックでした。
H3では主エンジン「LE-9」を新規開発し、民生品(自動車や家電で使われる量産部品)を積極的に採用してコストを下げています。「とにかく高性能」から「安く・確実に・頻繁に飛ばす」への発想転換が、H3という機体の本質です。
さらに2026年6月12日に打ち上げ成功した「30形態」は、固体ロケットブースターを使わず第1段エンジン3基で飛ぶ構成。より低コストの打ち上げメニューが加わりました(SPACE Media)。
宇宙産業の裾野はどこまで広い?
ロケット1機には数十万点規模の部品が使われると言われます。バルブ、配管、電子基板、断熱材、ネジ1本まで、それぞれに専門メーカーがいます。
さらに打ち上げ設備、試験設備、衛星の製造・運用、地上局——「宇宙産業で働く」の中身は想像よりずっと幅広い。三菱重工やJAXAに入ることだけが宇宙キャリアではありません。
近年は衛星データを使う側のビジネス(農業、防災、物流)も拡大していて、現場技能者からデータ活用人材まで、入口が増え続けています。
よくある質問(Q&A)
Q. 文系・未経験でも宇宙産業に関われますか?
A. 関われます。製造現場の組立・検査・物流管理、調達、品質保証の事務系職種など、理系の学位が必須でない仕事が多くあります。まず製造業の現場経験を積むのが近道です。
Q. 勤務地はどこになりますか?
A. 機体組立は愛知県の飛島工場、打ち上げは鹿児島県の種子島宇宙センターが中心ですが、部品メーカーは全国に分散しています。地元の製造業から宇宙関連の仕事に関わる道もあります。
Q. ロケットの仕事は失敗したらどうなるんですか?
A. 失敗は原因究明と対策のプロセスに変わります。実際、H3は初号機失敗の原因を潰して2号機を成功させ、8号機の失敗後も次の打ち上げ準備を進めています。失敗を許容して前進する文化は、この産業の強さでもあります。
打ち上げを支える「地上の仕事」を分解してみる
ロケットの仕事は飛ぶ機体だけではありません。種子島の射場では、発射台や燃料供給設備の整備、機体の組立棟での作業、燃料の極低温管理といった地上系の仕事が大量に動いています。
打ち上げ後も、ロケットを追いかける追跡管制、データ解析、次号機に向けた部品の検査と改善——1回の打ち上げの前後に、数カ月単位の地上業務が連なります。
これらは機械・電気・化学・土木の技能の組み合わせです。つまり「宇宙産業の求人」の正体は、かなりの部分が地上のものづくり・インフラの求人。ここを知っているだけで、求人票の見え方が変わります。
Q. 三菱重工に入社しないと宇宙には関われませんか?
A. いいえ。エンジン部品、バルブ、電子機器、地上設備の保守などを担う協力会社・部品メーカーは全国にあり、そこから宇宙案件に関わる人の方がむしろ多数派です。本体への転職は、その経験を積んだ後の選択肢にもなります。
Q. 業界研究はどこから始めればいいですか?
A. JAXAの公式サイトで打ち上げ予定と結果を追うのが基本です。実際の打ち上げ中継を見て、その裏でどんな職種が動いているかを想像してみてください。企業研究は三菱重工の宇宙事業ページと有価証券報告書が一次情報です。
ライバルは誰?世界の打ち上げ競争の現在地
世界の商業打ち上げ市場では、米国スペースX社が再使用ロケットで圧倒的な低価格と打ち上げ回数を実現し、市場を席巻しています。H3はその中で「価格を下げつつ、確実に上げる」信頼性で顧客を取りにいく戦略です。
また、安全保障や政府衛星の打ち上げを他国に依存しないためにも、自国のロケットを維持することには国家的な意味があります。商業競争と国の基盤、2つの役割を1本で担うのがH3です。
競争が厳しいからこそ、コスト削減・打ち上げ頻度向上のための改善が続き、そこに仕事が生まれ続けます。完成した産業より、戦っている産業の方が、20代に回ってくる役割は大きいものです。
まとめ:H3と宇宙産業、20代が押さえるべき数字
- H3は5機連続成功・成功率83%まで回復(2025年10月時点)
- 2026年6月12日に新形態「30形態」の6号機が打ち上げ成功
- 打ち上げ事業はJAXAから三菱重工へ移行中——宇宙は「民間の仕事」になった
- 三菱重工の平均年収は約1,017万円(2025年3月期有価証券報告書)
- 未経験者は「製造現場で2〜3年→宇宙関連メーカーへ」が現実的ルート
ロケットは打ち上げの瞬間だけが注目されますが、その裏には何年も続く地上の仕事があります。空を見上げる側から、飛ばす側へ。20代ならまだ間に合います。
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