20代・30代でキャリアに迷っている人へ。日本・英国・イタリアの3か国が、いま戦後最大級の国際共同プロジェクトを動かしてます。プロジェクト名はGCAP(Global Combat Aircraft Programme、グローバル戦闘航空プログラム)。第6世代の次期戦闘機を共同開発して、2035年の運用開始を目指す。2026年4月、初契約(約1,450億円)が締結され、本格的に動き出した。F-2(1990年代)以来、本格的に新型戦闘機を設計する経験が積める場が日本になかった——その空白を埋めるプロジェクトに、20代の航空エンジニアが集結します。
結論:戦後最大級の航空宇宙プロジェクトが動き出した
GCAPは2022年12月に日英伊3か国首脳が合意した次世代戦闘機開発プログラム。日本ではF-2戦闘機の後継機、英伊ではユーロファイター戦闘機の後継機となる。2026年4月1日、国際政府機関GIGOと合弁会社「エッジウィング(Edgewing)」の間で初契約(6億8,600万ポンド、約1,450億円)が締結され、設計・開発の本格段階に入った。日本の航空宇宙産業にとって、戦後最大級の国際共同プロジェクトです。
各国の役割分担
- 日本:主契約者=三菱重工業、エンジン=IHI、電子機器(レーダー等)=三菱電機。ミサイル分野は日英伊3か国で別枠の検討が進む
- 英国:主契約者=BAE Systems、エンジン=ロールス・ロイス、電子機器=Leonardo UK、ミサイル=MBDA UK
- イタリア:主契約者=Leonardo S.p.A.、エンジン=アヴィオ・エアロ、電子機器=Leonardo、ミサイル=MBDA
2026年初頭には、電子装備の共同開発のため日英伊4社連合「G2E」が発足。エンジンも日英伊3社(IHI・ロールス・ロイス・アヴィオ・エアロ)が国際共同体制で開発。電子機器の分野では、当初日本の三菱電機が主導権を握る案も検討されてたけど、最終的にイタリアのレオナルド主導の方向で調整された経緯がある。3か国の利害調整の難しさを示すエピソード。20代エンジニアが、こういう国際政治と技術の交差点で仕事するのは、めったにない経験です。
第6世代戦闘機って何?
ステルス性・高度ネットワーク連携・無人機との随伴運用・AI支援機能を備える次世代戦闘機の総称。F-35(第5世代)の次の世代として、米国NGAD計画、欧州FCAS、そして日英伊のGCAPが並走してる。「システム・オブ・システムズ」と呼ばれ、機体単体じゃなく無人機・衛星・地上装備と一体で運用する設計思想。レオナルドの幹部は東洋経済の取材で「GCAPは単なる戦闘機ではなく、システム・オブ・システムズだ」と語ってます。
20代エンジニアにとっての意味——技術需要のリスト
戦闘機開発は航空機産業の頂点で、波及範囲が広い。日本側のサプライチェーンには、三菱重工(小牧南工場・名古屋誘導推進システム製作所等)、IHI(瑞穂工場)、三菱電機(鎌倉製作所等)に加えて、川崎重工、SUBARU、住友精密工業、東レ、その他多数の中小部品メーカーが関与する見込み。次の領域に技術需要があります。
- 金属加工:チタン合金、特殊鋼、超合金の精密加工。航空機エンジンや機体構造に使われる難削材を扱う技術
- 複合材成形:CFRPなどの軽量複合材を航空機級の品質で量産する技術。東レが世界トップシェアを持つ領域
- 電子機器・半導体:レーダー、通信、自己防御装備。GaN(窒化ガリウム)半導体などの新材料が活躍
- ソフトウェア:自己診断、ネットワーク戦闘システム、AI連携。ソフトウェア工学の知見が必要
- エンジン:ジェットエンジンの高温部材、高速回転部品の精密加工。IHIが瑞穂工場で開発を進める
- 機体組立:三菱重工小牧南工場が中心。組立技能者と治具設計者の需要が高い
2035年運用開始までの約10年は、設計から試作、初号機製造の本格期。航空・宇宙系の製造業を志す20代にとって、世代に一度級のプロジェクトに関わる機会。F-2開発(1990年代)以来、日本の航空機エンジニアに本格的な設計経験が積める場が乏しかったけど、GCAPで一気に新しい設計人材が育つ局面になります。
三菱重工小牧南工場という拠点
三菱重工の小牧南工場(愛知県豊山町)は、F-2、F-15J、F-4などの戦闘機を組み立ててきた日本の航空機製造の中心拠点。GCAPの最終組立も小牧南で行われる見込みで、ここで働く技能者・設計者・生産技術者の役割は今後10年で大きく拡大する。航空機の組立技能は、自動車組立とは違う繊細さと品質管理が求められて、独自のスキルが必要。20代でここに入ると、「日本の戦闘機を作る」というキャリアの中核を担えます。
注意点——民間転用と長期視点
戦闘機開発は国家予算のプロジェクトで、民生分野への直接的な転用は限定的。ただし、複合材成形・高温材料・電子機器の技術は民間航空機(旅客機・ビジネスジェット)や宇宙開発、自動車のEV化など多方面に波及する。技術者個人にとっては「軍需だけのキャリア」じゃなく、最先端の素材・加工技術を学べる場という見方もできる。
GCAPはF-2の後継として日本の防衛産業基盤を支える役割を持つ。設計能力を国内に保有することは、長期的な安全保障の観点で意義があるとされる。一方で、3か国共同開発ゆえの調整コストや、当初想定より開発費が膨張するリスクも指摘されてる。スケジュールは2030年に初号機製造開始、2035年初号機納入を目指してます。
関連サプライヤー網の広がり
GCAPは大手企業だけじゃなく、中小・中堅製造業にも仕事が広がる。航空機部品は1機あたり数万点の部品で構成され、その多くを国内のサプライヤーが担う。愛知県、岐阜県、神奈川県、大阪府などに広がる航空機部品サプライヤー網は、GCAPによって2030年代の事業基盤を確保しようとしてる。建設業界も、開発・製造拠点の新設や改修工事で関与する可能性がある。20代の選択肢が、大手だけじゃなく中小サプライヤーまで広がります。
2035年に空を飛ぶ次期戦闘機の図面は、いまこの瞬間、名古屋とロンドンとローマで描かれている。
F-2からGCAPへ——日本の戦闘機開発の系譜
日本の戦闘機開発の歴史は、戦後しばらく国産機開発が制限された期間を経て、F-1(1975年初飛行、三菱重工)、F-2(1995年初飛行、日米共同開発)と続いてきた。F-2は米国F-16をベースに、CFRP主翼などの日本独自技術を盛り込んだ機体。しかし、F-2以降、日本の戦闘機の最終組立を担う設計人材は世代交代の課題に直面してた。
GCAPは、その世代の課題を一気に解決する側面がある。35歳前後の中堅エンジニアが設計の中核を担い、20代の若手が補助に入る——10年後、20年後を見据えた人材育成の場として、GCAPは機能する。F-2開発から30年経った2026年、ようやく次の戦闘機開発がスタートしたという見方もできます。
「日英伊3か国共同」の難しさと意義
3か国の国際共同開発はメリットとデメリットの両面がある。メリットは開発費の分担、技術の相互補完、市場の拡大(3か国+輸出市場)。デメリットは意思決定の遅延、仕様調整の複雑化、コスト超過リスク。欧州のユーロファイター開発でも、4か国共同(独・英・伊・西)で当初の想定より大幅にコストが膨らんだ歴史がある。GCAPはこの教訓を踏まえて、合弁会社エッジウィングに権限を集中させる構造を取った。
イタリア側の主契約者レオナルドは、ヘリコプター・電子機器・宇宙開発で世界的なメーカー。英国BAE Systemsは戦闘機開発で50年以上の蓄積を持つ。三菱重工は航空機分野でMRJ(三菱スペースジェット、後に開発中止)という苦い経験を持つけど、防衛分野の地力は依然として高い。3社の組み合わせは、技術と経営の両面でバランスを取った構成と評価できます。
無人機との連携——「ロイヤルウィングマン」構想
第6世代戦闘機の特徴の一つに「無人機との随伴運用」がある。有人の主力戦闘機が複数の無人機を引き連れて運用する構想で、米国NGADや欧州FCASも同様のコンセプトを持つ。日本ではこの随伴無人機を「ロイヤルウィングマン」と呼び、SUBARUなどが研究開発を進めてる。GCAPの本機と、それを取り巻く無人機群——この全体が「システム」。製造業全体で見ると、戦闘機本体だけじゃなく、無人機、地上管制、衛星通信、AI処理装置まで、関連する事業領域は大きく広がってます。20代エンジニアの選択肢が、機体本体じゃないところにも広がってる。
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