工場の機械が止まると、呼ばれる人がいます。設備保全の仕事内容と、未経験からの入り方

製造業キャリア・職種

工場の機械は、都合のいい時間に壊れてくれません。夜中でも、連休の前日でも止まります。そして止まった瞬間、必ず誰かが呼ばれます。今回はその「呼ばれる人」の仕事について、公的なデータと試験の公式情報だけを使ってまとめました。

「止まった」の一言で、全員の手が止まる

コンビニのおにぎり、スマホの中の部品、ペットボトルのキャップ。身のまわりのものは、たいてい工場のラインで作られています。ラインというのは、機械が何台も連なって、ベルトコンベアで次の機械へバトンを渡していく仕組みのことです。

このバトンリレーは、1台でも止まると全部止まります。前の機械がどれだけ元気でも、次が動かなければ製品は先に進めません。

だから工場では、「止まった」という連絡が入ると、その場の空気が変わります。組み立てをしていた人も、検査をしていた人も、手が止まる。そこで呼ばれるのが、設備保全と呼ばれる人たちです。

設備保全の仕事は、大きく3つに分かれます

厚生労働省が運営している職業情報提供サイト「job tag(じょぶたぐ)」は、日本の職業を1つずつ解説している公的なサイトです。そこに載っている「産業用ロボットの保守・メンテナンス」という職業は、別名として「機械保全工」「工場設備保全員」が挙げられていて、いわゆる設備保全の仕事がここに含まれます。

job tagの説明によると、仕事は大きく3つです(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「産業用ロボットの保守・メンテナンス」)。

1つめは、日常点検。 機械が動いているときに、音や動きにおかしなところがないか、ボルトや部品がゆるんでいないかを確認します。人間でいう毎朝の体調チェックに近い作業です。

2つめは、定期点検。 ラインを止めて、機械の内部まで見ます。電池の消耗や、細かい部品のすり減り・割れを確認して、掃除したり交換したりします。壊れてから直すのではなく、壊れる前に手を打つ考え方を予防保全と呼びます(予防保全=壊れる前に、決まった時期に部品を替えておくやり方)。

3つめは、故障対応。 実際に止まってしまったときに駆けつけて、原因を探し、ラインをもう一度動かします。3つのうち、いちばん「呼ばれる人」らしい仕事がこれです。

ドラマみたいな緊急出動ばかりの仕事ではなく、日常点検と定期点検が仕事の土台になります。

未経験から入れるのか、というところ

いちばん気になるところだと思います。job tagの「就業するには?」には、こう書かれています。

入職にあたって、特に学歴や資格は必要とされない

さらに、同じページには「新卒者や未経験者の中途採用者は、社内研修やロボットメーカーなどが主催している研修を受けて、基本的な技能や知識を身につける」「その後は先輩エンジニアとペアを組んで顧客企業を回り、OJTで経験を積んでいく」とも書かれています(OJT=実際の仕事をしながら先輩に教わること)。

「この職業で実際に働いている人が多いと感じる学歴」という調査項目もあって、高卒が51.4%、大卒が43.2%、専門学校卒が18.9%となっています(出典:同上。job tagはこの項目について「必須とは限りません」と注記しています)。高卒がいちばん多い、という点は知っておいていい数字だと思います。

入職する前に必要な訓練期間についても「特に必要ない」と答えた人が32.4%でいちばん多くなっています(出典:同上)。

もちろん、これは「未経験なら必ず採用される」という意味ではありません。求人ごとに条件は違います。ただ、学歴や資格で入口が閉じている仕事ではない、という事実は公的なデータで確認できます。

お金と、人の足りなさの話

job tagには統計データも載っています。ここは少し注意が必要で、この数字は設備保全という職業だけを切り出したものではなく、「はん用・生産用・業務用機械器具整備・修理工」という、もう少し広いくくりの統計です(job tag自身も「必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません」と注記しています)。

そのうえで見ると、こうなっています(出典:厚生労働省 職業情報提供サイト job tag。賃金・年齢は令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工、求人倍率は令和7年度のハローワーク求人統計データ)。

  • 賃金(年収):全国平均 571.2万円
  • 平均年齢:42.7歳
  • 有効求人倍率:5.63
  • ハローワークの求人賃金(月額):26万円

有効求人倍率というのは、求職者1人に対して求人が何件あるかという数字です。5.63ということは、1人に対して5件以上の求人がある計算になります。人を探している側のほうが多い状態だと読めます。

年収571.2万円は平均年齢42.7歳の数字なので、入ったばかりの人がいきなりこの額になるわけではありません。ハローワークの求人賃金が月額26万円というほうが、入口の感覚に近いはずです。

なお就業形態は、正規の職員・従業員が81.1%、派遣社員が8.1%となっています(出典:同上)。

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最初の1枚になる資格

資格がなくても入れる仕事ですが、「入る前に何か1つ持っておきたい」という方には、受験資格のハードルが低いものが3つあります。

機械保全技能士3級

設備保全の世界でいちばん名前が挙がる国家資格です。厚生労働省指定試験機関である公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が実施していて、特級・1級・2級・3級の4つに分かれています(出典:日本プラントメンテナンス協会「2026年度 機械保全技能検定の試験概要について(実施公示)」)。

ここが未経験の方にとって重要なところなのですが、3級の受検資格は「機械保全に関する業務に従事している者」または「従事しようとしている者」で、必要な実務経験年数は0年(問わない)と公式に定められています(出典:機械保全技能検定「3級の受検資格一覧」)。つまり、これから設備保全の仕事に就こうとしている段階でも受けられます。

参考までに、2級は実務経験2年以上、1級は7年以上、特級は1級合格後5年以上が必要です(出典:機械保全技能検定「試験要項」)。

試験は学科と実技の2つ。3級の学科は真偽法30問・60分、実技は機械系保全作業が判断等試験で70分、電気系保全作業が製作等作業試験で110分です。受検手数料は学科が4,600円、実技は一般で15,400円。2026年4月1日時点で23歳未満の方には減免制度があり、実技が11,600円、学生割引と併用すると6,200円まで下がります(出典:実施公示)。

難易度の感覚もお伝えしておきます。2025年度の実績では、3級の受検申請者6,982人に対して合格者は5,203人、合格率は74.5%でした。2級は45.3%、1級は39.7%です(出典:機械保全技能検定「2025年度 機械保全職技能検定 試験集計情報」)。3級は、きちんと準備した人が通るタイプの試験だと言えます。

ちなみにこの検定、年間の受検者数は33,481名で、技能検定の全職種のなかで2番目に多い受検者数です(出典:日本プラントメンテナンス協会)。

第二種電気工事士

機械が止まる原因は、機械そのものだけでなく電気側にあることもあります。一般財団法人 電気技術者試験センターが実施する国家試験で、受験案内には「受験に対して制限や条件はございません。どなたでも受験ができます」と明記されています(出典:電気技術者試験センター「令和8年度 第二種電気工事士下期試験 受験案内」)。

受験手数料はインターネット申込みで11,100円(非課税)、郵送での書面申込みで12,500円。学科試験(CBT方式または筆記方式)に合格したあと、技能試験を受ける流れです(出典:同センター公式サイト)。

危険物取扱者 乙種第4類

工場によっては油や薬品を扱います。一般財団法人 消防試験研究センターが実施しており、乙種・丙種は「受験資格は必要ありません。どなたでも受験できます」とされています。乙種の受験手数料は5,300円です(出典:消防試験研究センター「危険物取扱者試験」)。

しんどいところも、先に書いておきます

いいことばかり書いても役に立たないので、job tagの「労働条件の特徴」に書かれている内容をそのまま紹介します。

大規模な点検やメンテナンスは、工場が動いていない夜間や休日に行うこともあります。また、トラブル対応のために残業が発生することもあります(出典:job tag 同ページ)。

つまり、機械が休んでいるときに働く場面がある仕事です。ここが合うかどうかは、かなり個人差があります。逆に言えば、静かな工場で自分のペースで機械と向き合う時間が好きだという方には、悪くない環境かもしれません。

もう1つ。産業用ロボット(定格出力が80W未満のものを除く)の教示や検査に関わる業務に就く場合は、労働安全衛生法にもとづく安全衛生特別教育を受ける必要があります(出典:job tag 同ページ)。これは入社後に会社側で受けさせてくれることが一般的です。

よくある質問

Q. 機械いじりの経験がまったくありません。それでも大丈夫ですか?

job tagには「入職にあたって、特に学歴や資格は必要とされない」とあり、入職前の訓練が「特に必要ない」と答えた人が32.4%でいちばん多いというデータもあります。ただし求人ごとの条件は会社によって違いますので、応募先の募集要項をご確認ください。未経験からの募集もありますが、全部がそうだとは限りません。

Q. 機械保全技能士は、働きながらでも取れますか?

3級は実務経験を問われないので、働き始める前でも後でも受けられます。2級からは実務経験2年以上が必要になるため、まず仕事に就いてから2級を目指す、という順番の方が多い資格です。2026年度の試験日は、第2回が2級は2026年12月13日(日)、特級・1級・3級は2027年1月10日(日)と公示されています(出典:実施公示)。

Q. 設備保全と、製造オペレーターは何が違うのですか?

ざっくり言うと、製造オペレーターは機械を「使って」製品を作る人、設備保全は機械そのものを「動く状態に保つ」人です。同じ工場にいて、隣で働いています。オペレーターとして入社したあと、設備保全に移る道もあります。

設備保全は、成果が目立ちにくい仕事です。うまくいっている日は、誰も何も言いません。機械が止まらなかった日は、そもそも何も起きていないからです。

それでも、止まった瞬間にみんなが自分を見るという経験は、他の仕事ではなかなかできません。「呼ばれる側になる」という働き方に引っかかるものがあれば、調べてみる価値はあると思います。

日本ものづくりキャリアでは、キャリア相談を無料で受け付けています。設備保全に限らず、「この職種、自分に向いているのか分からない」という段階のご相談でも構いません。

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