ガンプラは塗っていないのに色がついています。静岡市の工場でやっている「4色いっぺん」の話

ものづくり産業・歴史

ガンプラの箱を開けると、白いパーツと赤いパーツが最初からきれいに分かれて入っています。絵の具も筆も入っていないのに、です。あれがどこで、どうやって作られているのかという話です。

買った時点で、もう色がついている

プラモデルといえば、本来は「塗るもの」です。でもガンプラは、箱を開けて、パーツをパチパチ外して、説明書のとおりにはめていくだけで、白と赤と青と黄色がそろったガンダムが立ち上がります。

これ、よく考えると不思議です。1枚の板みたいな枠(この枠を「ランナー」と呼びます。パーツがくっついている、あの外枠のことです)に、白いパーツと赤いパーツが両方ついていることがあります。同じ板なのに、色が違う。

塗っているわけではありません。プラスチックそのものの色です。溶かす前の原料の段階で、もう白だったり赤だったりする。だから爪でこすってもはがれません。

問題は「じゃあ、どうやって1枚の板に違う色を流し込んでいるのか」です。その答えが、静岡市にあります。

ガンプラの工場は静岡市葵区長沼にある

ガンプラを作っている工場の名前は「バンダイホビーセンター」といいます。場所は静岡県静岡市葵区長沼です。

ここで、よくある誤解をひとつ先に消しておきます。「ガンプラ工場は静岡にひとつだけ」と言われることがありますが、2026年現在、正確には少し違います。

BANDAI SPIRITS(バンダイスピリッツ)の公式サイトの事業内容ページでは、プラモデルの生産拠点として「バンダイホビーセンター」と新工場「BHCPDII」の2つが挙げられています。建物としては2つです。ただしどちらも静岡県静岡市にあり、新工場は既存の工場に隣接して建てられたものです(2024年11月6日のニュースリリース)。

なので正しい言い方は、「工場がひとつ」ではなく、「静岡市葵区長沼という同じ一角に、まとまっている」です。

時系列を整理すると、こうなります。

  • 2006年:既存のバンダイホビーセンターが竣工(2024年11月6日のニュースリリースに記載)
  • 2025年1月:新工場が竣工予定と発表
  • 2025年7月24日:新工場が稼働を開始(2025年8月20日のニュースリリース)
  • 2026年度:新工場の本格稼働時に、全体で2023年度と比べて約35%の増産が可能になる見込み(2024年11月6日のニュースリリース)

新工場の敷地面積は約14,724平方メートル、延床面積は約18,076平方メートルで地上3階建て(2025年5月29日のニュースリリース)。屋根には太陽光パネルが1,080枚設置されています。

「塗っていないのに色がつく」のしくみ

ここからが本題です。専門用語が出てきますが、その場でかみ砕きます。

まず「金型」という金属のかたまりがある

プラスチック製品は、だいたい金型(かながた)というものから生まれます。金型=プラスチックを流し込んで形を作る、金属でできたたい焼き型のようなものです。上と下で1組になっていて、間にできたすき間に溶けたプラスチックが入り、冷えて固まると製品の形になります。

バンダイの公式サイト「ガンプラのできるまで」によると、工程はざっくりこう進みます。ラインナップを決める → 3D-CAD(=コンピューターの中で立体を設計するソフト)で形を作る → 試作する → 金型を設計する → その設計データから金型を作る → 完成した金型を射出成形機(=溶かしたプラスチックを勢いよく型に押し込む機械)に取り付けて生産する → 箱詰めして店頭へ。

ここまでは、世の中のプラスチック製品と共通する流れです。

ガンプラが特別なのは「多色成形機」

ちがうのはここからです。

BANDAI SPIRITSの2025年8月20日のニュースリリースでは、多色成形機を「1つの金型に4つの色、4つの異なる素材を同時に成形できる自社オリジナルの成形機」と説明しています。自社オリジナル、つまり自分たちで作った機械だということです。

多色成形=1回の作業で、違う色(違う素材)のプラスチックを同じ型に同時に流し込むやり方、と考えてください。だから1枚のランナーの中に、白いパーツと赤いパーツが同居できる。塗装がいらないのは、このためです。

生産量もリリースに書かれています。新工場では多色成形機1台あたり1日で約4,000枚のランナーが製造可能とのこと。ちなみに2024年11月6日のリリースによれば、既存のバンダイホビーセンターでも「4色射出成形機」が使われてきました。新工場では2026年度の本格稼働時に、多色成形機10台・単色成形機84台という構成になる予定と発表されています。

つまり、手元で「パチッ」と外しているあのランナーは、静岡市の工場で1日に何千枚という単位で生まれているわけです。

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数字で見る、45年分の積み上げ

ガンプラのスケール感がわかる数字を、公式のものだけ挙げます。

バンダイ/BANDAI SPIRITSの公式企業サイト「強みと戦略」には、ガンダムシリーズのプラモデルの総累計出荷数として8億1,072万個以上(2025年3月期末現在)と記載されています。基準日が明記されている数字なので、これを使うのが安全です。

日本の人口がおよそ1億2千万人ですから、単純計算で国民ひとりあたり6個以上。海外にも出ているので実際の配分は違いますが、「とんでもない数の型が毎日動いている」ことは伝わると思います。

なお、何か国に出荷しているかという数字は、今回、公式サイトで確認できませんでした。一次情報で裏が取れなかったので、この記事では書きません。

組み立てたあとに残る「あの枠」も、回収されている

パーツを外したあとに残る枠。あれ、捨てていますか。

株式会社バンダイの公式サイトによると、2021年に「ガンプラリサイクルプロジェクト」が始まっています。組み立てたあとに不要になるランナーを、プラスチックの資源として回収する取り組みです。

しくみが地味に賢くて、全国約200か所の回収ボックスで集めたランナーを、もともと商品を配達しているトラックが、帰り道に積んで回収する。運ぶためだけに余分なCO2を出さずに済む設計です。

集まったランナーはバンダイホビーセンターに集約され、素材ごとに仕分けて、細かく砕いて、粒状の「ペレット」(=プラスチックの原料の粒)にして、また熱で溶かして金型に入れる。つまり、ガンプラの枠がガンプラに戻っていくわけです。

工場見学はできる? できない?

ここは間違いやすいので、はっきり書きます。

バンダイ ホビーセンターの公式サイトには、「既存工場のバンダイホビーセンターは、現在工場見学を募集しておりません」と書かれています。工場そのものを見学するツアーは、募集されていません。

一方で、2025年9月2日にオープンしたのが「BHC PDII MUSEUM」という施設です。新工場の2階・3階の一部にあり、所在地は静岡県静岡市葵区長沼500-15。プラモデルの企画・開発を体験できるミュージアムで、公式サイトによると所要時間はおよそ90分、営業時間は9時から17時30分、月曜・火曜・祝日・年末年始などが休館日です。

そしてミュージアムの公式サイトによれば、館内の「Study Area」からは工場内部を見ることもできるとされています。工場見学ツアーではないけれど、作っている現場そのものは視界に入る、という位置づけです。

チケットは、2025年5月29日のニュースリリースの時点では完全予約制で、料金は大人(13歳以上)2,860円、小人1,100円、未就学児無料と発表されていました。2026年現在の公式サイトには事前予約と当日チケットの案内が出ています。行く前に必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。来場者用の駐車場・駐輪場はないと明記されています。

「金型」も「成形」も、職業の名前です

最後に、この記事でいちばん伝えたいことを。

ここまで出てきた「金型」「成形」「生産技術」は、雑学の用語ではなく、実在する職種の名前です。

バンダイ/BANDAI SPIRITSの新卒採用サイトの職種紹介ページには、「企画」「設計」「金型」「生産」「宣伝」といった職種が並んでいます。そこでの説明を読むと、金型の仕事は「人間の目と手の感覚で金型をみがき上げる」ものだと書かれています。機械で削ったあと、最後は手作業で仕上げる。生産の仕事については、複数の色や素材のプラスチックを同時に成形するために、温度・速度・タイミングといった条件を組み合わせている、と説明されています。

これはバンダイに限った話ではありません。金型を作る人、成形の条件を詰める人、ラインを設計して不良を減らす人(生産技術と呼ばれる仕事です)は、日本中の製造業の会社にいます。スマホのケースにも、車のバンパーにも、コンビニの弁当容器にも、それぞれ金型があり、それぞれ「何度で、何秒で流し込むか」を決めた人がいます。

ガンプラのパーツを外しながら「これ、どうやって作ってるんだろう」と思ったことがあるなら、その疑問の先には、ちゃんと仕事があります。

よくある質問

ガンプラの工場は静岡県にしかないのですか?

BANDAI SPIRITSの公式サイトの事業内容ページでは、プラモデルの生産拠点として「バンダイホビーセンター」と新工場「BHCPDII」(いずれも静岡県静岡市)の2つが挙げられています。この記事では公式サイトに書かれている範囲だけを事実として扱っており、それ以外の拠点の有無については確認できていません。

塗装しなくても色がついているのは、シールが貼ってあるからですか?

いいえ。プラスチック自体の色です。BANDAI SPIRITSの2025年8月20日のニュースリリースでは、多色成形機を「1つの金型に4つの色、4つの異なる素材を同時に成形できる自社オリジナルの成形機」と説明しています。違う色の材料を同じ型に同時に流し込んでいるため、塗らなくても色が分かれています(キットによっては別途シールが付属する場合もあります)。

未経験でも、こういう工場の仕事に入れますか?

製造業の求人には、経験者向けの設計・金型のポジションもあれば、未経験から始められる製造・検査のポジションもあります。どの入口が向いているかは、通勤範囲・働ける時間帯・体力面など条件によって変わります。求人票だけで判断せず、実際の仕事内容を確認してから決めることをおすすめします。

ガンプラを組み立てながら「作る側」に興味が出てきた方は、どんな職種があって、未経験からどの順番で覚えていくのかを、一度整理して話してみるだけでも景色が変わります。日本ものづくりキャリアでは、そうしたキャリアのご相談を無料で受け付けています。まだ転職を決めていない段階でのご相談でも大丈夫です。

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