20代・30代でキャリアに迷っているあなたへ。鉄道発祥の国はイギリス。その本場の都市間特急を、いま日本の日立が作っています。しかも日本からの輸出ではなく、英ダーラム州の自社工場「ニュートン・エイクリフ」で現地生産。日本のものづくりが海外で雇用まで生んでいる話です。
結論:日立は「鉄道の本場」イギリスで勝ち続けている
日立はイギリスで特急車両70両(14編成)を受注し、契約総額は5億ポンド(約960億円)。車両は2027年から引き渡されます(日本経済新聞)。
さらに2025年4月には、バッテリーハイブリッド車両45両を約580億円で追加受注。鉄道を発明した国が、日本企業に最新車両を任せている構図です。
ニュートン・エイクリフ工場って何?
イングランド北東部ダーラム州にある日立の鉄道車両工場です。英国の都市間特急計画に合わせて建設され、現地の人材を雇用して車両を生産しています。
日立が英国で走らせる高速車両は「英国新幹線」とも呼ばれ、日本の新幹線で培った技術がベースにあります。新規受注は工場の生産継続と地域の雇用に直結するため、現地でも大きなニュースになります(東洋経済)。
なぜ「売って終わり」じゃないの?
鉄道ビジネスの本当の稼ぎどころは、車両を売った後の保守・メンテナンスです。日立は英国で約440億円の保守契約を2031年まで延長するなど、長期で稼ぐ契約を積み上げています(日本経済新聞)。
- 特急車両70両:約960億円(2027年引き渡し開始)
- ハイブリッド車両45両:約580億円(2025年4月受注)
- 保守契約:約440億円、2031年まで
新型車両は座席数が20%増え、英国北東部〜ロンドン間で年間40万席を新たに提供できると報じられています。
働き方の選択肢として見ると何が面白い?
鉄道車両は設計から製造、試験、保守まで職種の幅が広い産業です。車体の溶接・組立、電装、台車、内装、そして走り始めてからの検査・メンテナンス——数十年単位で仕事が続きます。
しかもグローバル案件が多く、海外工場の立ち上げや現地指導といった「日本の製造業の腕を海外で発揮する」キャリアパスが現実にあります。
年収はどれくらい?
日立製作所の平均年収は約961万円(2025年3月期有価証券報告書、平均年齢42.6歳)。日本の大手製造業でも上位の水準です。
もちろん協力会社・グループ会社で水準は変わりますが、鉄道は公共インフラなので仕事量が景気に左右されにくいのが特徴です。
未経験から鉄道車両の仕事に入るルートは?
狙い目は溶接・配線・組立と、車両保守(メンテナンス)です。特に保守は全国の車両基地で恒常的に人が必要で、未経験採用の入口が比較的広い領域です。
20代なら、まず車両メーカーや整備会社の現場で技能を身につけ、電気・機械系の資格を重ねるルートが王道。鉄道の経験は海外案件にもつながります。
将来性は?
世界的な脱炭素の流れで、鉄道は「最もCO2排出の少ない大量輸送手段」として再評価されています。バッテリー駆動車両のような新技術への置き換え需要も始まったばかりです。
鉄道発祥の国で日本企業が選ばれ続けている事実は、この産業の技術力がいま世界で通用している証拠です。
鉄道を発明したのはイギリス。その未来の車両を作っているのは、日本の日立。
「あずま」って知ってる?英国人が日本語名の特急に乗っている
日立が英国の鉄道会社LNERに納めた高速車両の愛称は「Azuma(あずま)」。日本語の「東」です。ロンドンからエディンバラへ、日本語の名前の特急が毎日走っています。
英国は鉄道発祥の国であると同時に、車両の老朽化に長年悩んできた国でもありました。そこに日立は新幹線で培った「壊れない・遅れない」技術を持ち込み、信頼を積み上げて受注を重ねてきました。
日本国内の母工場は山口県下松市の笠戸事業所。山口の工場と英国ニュートン・エイクリフ工場が技術でつながり、日英にまたがる生産体制を組んでいます。
バッテリーで走る列車って、何が新しいの?
2025年4月に受注したのはバッテリーハイブリッド車両です。電化されていない区間では架線なしで走れるため、路線全体に架線を張る巨額工事を省けます(日立ニュースリリース)。
英国には非電化区間が多く残っており、「電化工事をせずに脱炭素する」手段として電池駆動への期待は大きい。クルマのEV化と同じ変化が、鉄道でも始まっています。
車両にとって電池・モーター・制御は新しい主戦場。鉄道車両の仕事は「枯れた技術」ではなく、いままさに技術の世代交代期にあります。
よくある質問(Q&A)
Q. 鉄道会社と車両メーカーは何が違うんですか?
A. 鉄道会社(JRや私鉄)は列車を「走らせる」会社、車両メーカーは列車を「作る・直す」会社です。ものづくりのキャリアを積みたいなら後者で、溶接・電装・艤装・検査などの職種があります。
Q. 海外で働くチャンスは本当にありますか?
A. あります。日立のように海外工場や海外保守拠点を持つメーカーでは、国内で技能を磨いた人材が立ち上げ支援や技術指導で海外に出る例が実際にあります。英語は後から、技能が先です。
Q. 鉄道業界は斜陽じゃないんですか?
A. 国内の人口減で路線網は厳しい一方、世界では脱炭素の流れで鉄道投資が拡大しています。英国政府が鉄道再国有化を進めるなど制度変化はありますが(ジェトロ)、車両の更新需要そのものは続きます。
「車両を作る」仕事を職種に分解してみる
鉄道車両の製造は、車体の骨格を組む構体(こうたい)溶接、内装や機器を取り付ける艤装(ぎそう)、走行装置である台車の組立、配線・電装、そして完成後の試験という流れで進みます。
1編成に数年単位で関わることもあり、自分の手がけた車両が何十年も走り続けるのがこの仕事の醍醐味です。「自分の仕事が地図に残る」建設業と並ぶ、形に残る仕事の代表です。
溶接・電気配線・機械組立——どの技能から入っても車両製造に到達できます。鉄道が好きかどうかより、手に職を積み上げたいかどうかで選んでいい業界です。
Q. 笠戸事業所ってどんな拠点ですか?
A. 山口県下松市にある日立の鉄道車両の主力工場で、100年以上の歴史を持ち、新幹線車両や英国向け車両の生産を担ってきました。瀬戸内の港に面し、完成した車両を船で世界へ送り出します。地方都市で世界向けの仕事ができる拠点の代表例です。
Q. 英国の鉄道再国有化はビジネスに影響しませんか?
A. 英国政府は鉄道運営の再国有化を進めていますが(ジェトロ)、老朽車両の置き換え需要そのものはなくなりません。運営の枠組みが変わっても「新しい車両を作れる会社」への発注は続く、というのが現状の構図です。
世界の鉄道車両メーカーの中で、日立はどの位置?
世界の鉄道車両市場は、欧州勢や中国の巨大メーカーがひしめく激戦区です。その中で日立は、英国とイタリアに生産拠点を持ち、車両から信号・運行管理システムまで一括で提供できる体制を強みに存在感を高めてきました。
規模では巨大勢に劣っても、「新幹線由来の信頼性」と「車両+デジタルの一括提案」で勝つ。日本の製造業が世界で戦うときの、現実的な勝ち筋を体現している事業です。
そしてこの戦いの足元を支えているのは、笠戸やニュートン・エイクリフの工場で車両を組み上げる現場の技能者たちです。世界の受注合戦のニュースの裏に、必ず現場の仕事がある——製造業とはそういう産業です。
まとめ:日立の英国鉄道ビジネス、20代が押さえるべき数字
- 特急車両70両を約960億円で受注、2027年から引き渡し
- 2025年4月にバッテリーハイブリッド車両45両を約580億円で追加受注
- 保守契約約440億円を2031年まで延長——「売った後」で稼ぐモデル
- 日立製作所の平均年収は約961万円(2025年3月期有価証券報告書)
- 母工場は山口県下松市・笠戸事業所。国内で技能を積んで海外へ出る道がある
鉄道を発明した国の通勤客が、毎朝日本製の車両に乗る。その車両を作る側に回るキャリアは、20代の選択肢として現実に開いています。
最後に一言。鉄道車両の仕事は、完成した車両が30年、40年と走り続けるぶん、自分の技能の証拠が長く残ります。転職を考えるときは、給与や知名度に加えて「自分の仕事がどれだけ長く残るか」という物差しも持ってみてください。その物差しで測ると、製造業の見え方は大きく変わります。
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